インスリン分泌促進薬は、スルホニルウレア系と非スルホニルウレア系に分類されます。
スルホニルウレア系インスリン分泌促進薬(頭文字を取ってSU剤と呼ばれます)は、古典的な糖尿病の治療薬ですが、
現在でも、その有用性は高く、臨床現場でも、未だ使用されている薬剤です。
SU剤の作用機序を理解する上で、若干のインスリン分泌機構を理解する必要がございます。
インスリンは、膵臓β細胞から分泌されます。
細胞外のブドウ糖濃度(血液中のブドウ糖濃度)が上昇すると、2型糖輸送担体(GLUT2)によって、
細胞内に、ブドウ糖が取り込まれます。
取り込まれたブドウ糖がグルコキナーゼによって代謝され、アデノシン三リン酸(ATP)に産生されると、ATP感受性カリウムチャンネルが閉鎖し、
細胞が脱分極します。これによって、電位依存性カルシウムチャンネルが開口し、細胞内へカルシウムが流入し濃度が高まると、
インスリン分泌が誘発されます。
SU剤は、ATP感受性カリウムチャンネルを構成する膜タンパク質であるSU受容体に結合し、このATP感受性カリウムチャンネルを閉鎖させます。
チャンネルが閉鎖した後は、同様に膵β細胞が脱分極し、インスリンが分泌されます。
つまり、ブドウ糖の刺激無しに、インスリンの分泌させる事が可能となりますが、血糖値が低下している場合も関係なく、インスリンが分泌されてしまう事でもあり、
これが副作用である低血糖発作の原因となっっています。
非スルホニリルウレア系のインスリン分泌促進薬は、グリニド系とも言われ、超即効性のインスリン分泌促進薬とも言われております。
SU剤とは、作用部位が異なるとされており、最大の特徴は、作用発現時間に有ります。
グリニド系薬剤は、服薬後30程度で効果を発現し、1時間後近辺にピークが有るとされ、
また、4時間程度で効果が消失いたします。
効果発現が早いため食直前の服用と、食事の回数に応じた服薬が必要となります。
食前30分程度前の服薬では、低血糖を生じる可能性が出現します。
SU剤もグリニド系薬剤も、膵臓β細胞作用しインスリンを分泌させる薬剤です。 作用機序から、膵臓β細胞の破壊によって生じる1型糖尿病には適応はなく、2型糖尿病に適応がございます。
また、妊娠中の服用は、胎児への影響が懸念されるため、インスリン注射に変更されますが、 発展途上国では、治療費等問題から、妊娠中の血糖コントロールにも、同薬剤が使用される場合がございます。 胎児への影響は、少ないとされておりますが、詳細は解っておりません。
臨床の現場では、各薬剤の力価(血糖降下作用)を把握する必要がございます。
そう出なければ、闇雲に薬剤を変更し、増悪してしまう場合もございます。
臨床現場で頻用されるSU剤は、グリベンクラミド(ダオニール、オイグルコンとそのジェネリック医薬品)、
グリクラジド(グリミクロンとジェネリック医薬品)、グリメピリド(アマリールとジェネリック医薬品)が挙げられます。
諸説ございますが、
グリメピリド(アマリール)1mg<グリクラジド(グリミクロン)40mg<グリベンクラミド2.5mg
といったイメージです。
グリニド系薬剤は、ナテグリニド(ファスティックとスターシス)、ミチグリニド(グルファスト)、レパグリニド(シュアポスト)
が、本邦で使用可能です。
残念ながら、いずれの薬剤も血糖低下作用は弱いと言わざるを得ません。
作用機序から、理想的な薬物動態と考えられましたが、肝心の効果は、弱めな薬剤です。
SU剤には、二次無効という問題が議論されております。
二次無効は、SU剤による効果が得られなくなる事を指します。
ただし、それが薬効が減弱して来たのか、
それとも、食事や運動の乱れが原因になっているのかを判断しないとなりません。
それには、残存した膵β細胞のインスリン分泌能の評価が欠かせません。
正確には、24時間の蓄尿中のCペプチドを測定いたします。
この場合は、3日間の測定を行い、平均値を判断します。
Cペプチドが30μg/日である場合は、インスリン治療の相対的適応となります。
また、グルカゴン負荷試験もしばしば行われます。
グルカゴン1mg静注後6分で、血中CPR1.8ng/ml以下の場合も、インスリン療法を考慮いたします。
ただ、これらの検査は入院を要したり、煩雑であったりするため、簡便な指標が求められておりました。
そこでこれらの代用になると考えられているのが、空腹時の血中CPR値です。
血中CPRの値は、グルカゴン負荷試験と相関するとされ、血中CPR0.5ng/ml以下は、インスリン療法が考慮されます。
逆に、血中CPRが1.0ng/ml以上有る場合は、インスリン分泌能は、保たれていると判断できます。
「アマリール」。(サノフィ・アベンティス)
糖尿病の治療薬の一つで、主成分(一般名)はグリメピリドGlimepirideです。
確実な効果が期待できるため、もっとも頻用されている糖尿病治療薬の一つに数えあげられます。
アマリールは、糖尿病治療薬のスルホニルウレア剤(SU剤)に分類されます。アマリールを含むSU剤は、主に膵臓のβ細胞に作用して、血糖降下作用のあるホルモン、インスリンの分泌を促します。
また、アマリールは、今までのSU剤と異なり、膵外作用(膵臓からのインスリン分泌促進作用以外の作用)も指摘されています。その一つとして、インスリン抵抗性改善作用が挙げられます。
アマリールの主な副作用ですが、その作用機序から推測できるように、インスリンの過剰分泌による低血糖発作です。
低血糖発作は、実は、高血糖よりも危険な場合が多いと、糖尿病専門医に認識されています。
血糖値を正常に近づけるために、お薬を増量すると、この低血糖発作のリスクが高まります。
糖尿病を治療をうけるにあたり、専門医の治療が推奨されるのは、多くの糖尿病治療薬は、その服用量の調整に、細心の注意を要するためです。
また、アマリールの弊害の一つとして、体重増加が指摘されています。
これは、アマリールに限ったことではなく、SU剤と呼ばれる糖尿病治療薬や、インスリン治療を行っている患者さまにしばしば見受けられることです。
糖尿病治療には、食事療法が重要です。この食事療法がうまく出来ていない場合に、アマリールやSU剤、インスリンを無暗に増量すると、体重増加をきたします。
これは、インスリンの作用によるものです。インスリンは、血糖を体に吸収させることにより、血糖降下作用を示します。
つまり、無駄な糖分をも吸収させてしまうため、このような体重増加をきたしてしまいます。
糖尿病と言うと、「体重を落とす」と言われて事が多く、矛盾した薬効と思われると思います。
”間違った食事療法”をとっている場合に見受けられるもので、適切な使用をしていれば、問題ありません。
アマリールは、糖尿病治療上、重要な薬剤の一つです。
糖尿病患者の26-35%は勃起障害になっているとの報告もあり、糖尿病は勃起障害の原因となる可能性があります。糖尿病合併勃起障害の治療は糖尿病の適切なコントロールが必要です。
その上で、バイアグラ®、レビトラ®、シアリス®などのED治療薬を併用して治療を行う場合が多いです。
アマリールとバイアグラ錠、レビトラ錠、
シアリス錠との併用は可能です。
2011年より、本邦でもアマリールのジェネリック医薬品が登場しております。元来、高価な薬剤ではありませんでしたが、これで、みなさまの負担が、さらに低減されます。
ジェネリック医薬品ですが、グリメピリド「製薬会社名」
と表記されます。
「オイグルコン」。(中外製薬)
「ダオニール」。(サノフィアベンティス)
オイグルコンは、SU剤に分類される糖尿病治療薬です。成分は、グリベンクラミドglibenclamideです。
膵臓β細胞に作用し、インスリン分泌を促進させます。
オイグルコンの血糖降下作用は、SU剤中でも強力であり、糖尿病治療の指標であるヘモグロビンA1cを低下させます。
全てのSU剤に共通ですが、長期にオイグルコンを使用した場合、血糖降下作用が減弱する場合がございます。(これをSU剤の二次無効と言います)
経口血糖降下剤が無効となった場合には、インスリン注射の必要が生じてしまうため、現在では、SU剤には二次無効があるため、使用頻度が低下しています。
ただ、SU剤は、糖尿病治療薬のなかでも、血糖降下作用が強いために、なくてはならない薬剤でもあります。
副作用は、その血糖降下作用が強力な故、低血糖発作に注意が必要です。
ジェネリック医薬品も豊富です。2011年3月現在
「オペアミン」,「グリベンクラミド会社名」,「ダムゼール」,「パミルコン」,「ブラトゲン」,「ベンクラート」,「マーグレイド」
ジェネリック医薬品は、次々と市販されるため、上記が全てではない場合がございます。
ファスティック。第一三共株式会社、味の素製薬
スターシス。アステラス製薬
成分は、ナテグリニドnateglinide。
ファスティック・スターシスは、糖尿病治療薬で、即効型インスリン分泌促進薬、グリニド系に分類されます。
膵臓にあるランゲルハンス島β細胞を刺激してインスリンの分泌を促進する薬です。
アマリールなどのスルホニル尿素薬(SU薬)と同じ受容体に作用いたします。
ファスティック・スターシスの特徴は、速効短時間で作用するため、食後の急激な血糖の上昇を防ぐ効果があります。 そのため速効型食後血糖降下剤とも呼ばれています。
ファスティック・スターシスは、食後に内服すると速やかな吸収が困難になる為、1日3回の食直前投与となっており、効果が速やかな為、食前10分以内(食直前)の内服となっています。食前30分投与では食事の前に低血糖になる可能性もあり注意が必要です。
2013年4月時点で、ナテグリニドのジェネリックはありません。
またED治療薬、バイアグラ、レビトラ、シアリスおよびAGA治療薬プロペシアとの併用も禁忌ではありません。
糖尿病の合併症の進行によっては、処方できない場合もありますので相談して下さい。
written by レトビラなら池袋スカイクリニック