「アドシルカ」。(イーライリリー-日本新薬)
PDE5阻害剤に分類され、原発性肺高血圧症の治療に使用されます。
その主成分は、シアリスと同様、タダラフィルtadalafilです。
ED治療薬は、血管拡張作用により、勃起不全改善効果だけでなく、様々な効果が指摘されております。
その一つとして、原発性肺高血圧症という難病の治療薬として認可されております。
使用量は、アドシルカ一日一回40mgです。
ED治療に認可せれている用量以上に常用量が設定されています。
また、バイアグラの主成分であるシルデナフィルsildenafl
にも同様の作用があり、「レバチオ」として「アドシルカ」より先に市販されております。
「レバチオ」。(ファイザー)
PDE5阻害剤に属する原発性肺高血圧症の治療薬です。
先にも述べましたが、その主成分は、バイアグラと同様、シルデナフィルsildenaflです。
レバチオは、6分間歩行テストや血行動態を改善するとされております。
一回20mgを一日3回の服用が認可されておりますが、一回80mg一日一回の服用でも、有効性が確認されています。
肺血圧症とは、その名が示す通り、肺血圧の上昇を来たす疾患で、平均肺動脈圧は25mmHg以上の場合を肺高血圧症としています。 肺高血圧症は、様々な原因で発症し、その原因によって当然ですが、治療法も異なってきます。 臨床では、1998年のエイビアン分類を引き継いだ、2008年のダナポイント分類が使用されます。 ダナポイント分類のエイビアン分類からの変更点は、肺動脈性の分類(分類1)に、住血吸虫と溶血性貧血が加わり、 肺静脈閉塞症が、分類1´とされたことです。 分類1に含まれていた、その他の肺高血圧症が、分類5に分けられています。 以下に、ダナポイント分類を示します。
肺高血圧症は、頻度も少なく難病であるため、一般臨床医が自ら治療を行うのではなく、
専門治療の受けられる医療機関に紹介、そこでの治療が中心となります。
そのため、如何に見落としなく診断を下せるかが重要となります。
当然ですが、まず、症状から本症を疑う事から始まります。
症状は、息切れ、倦怠感、狭心痛、失神、腹部膨満が代表的です。
胸部聴診所見では、右心系の異常音を聴取致します。
症状や理学所見から本症を疑った場合、検査を進めていくことになりますが、
一般的な医療機関や診療所では、設備の制限から、検査も限界があります。
本邦では、多くの医療機関や診療所においても、レントゲン撮影や超音波検査が施行可能です。
肺高血圧症の診断時点では、9割程度の患者の胸部レントゲン写真上、何らかの所見が確認できるとされます。
肺動脈の拡大と末梢肺動脈の先細りが、代表的な所見です。
心臓超音波検査は、より詳細な情報を得る事が可能です。
肺動脈収縮期圧の推定には、三尖弁閉鎖不全からの逆流から、ドップラ法で流速を得て、
簡易ベルヌーイ式を持ちいて算出されます。
また、右室流出路の駆出波形の測定も有用です。
右室駆出時間に対して肺動脈が最大流速になる時間の比(acceration time:AcT)は、
肺動脈圧と負の相関を示すとされ、AcTが0.3以下の場合は、肺動脈圧が30mmHgと推測されます。
肺動脈拡張末期圧の推定には、肺動脈弁逆流から得られる圧格差に、右室拡張末期圧を加算した値が用いられます。
右室拡張末期圧は、右房圧と同じと考えられ、下大静脈から推測可能です。
右心機能の評価では、特に三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)が注目されております。
心尖部四腔断面像Mモード法で、右心自由壁の三尖弁輪の収縮期の心尖部への移動距離を測定いたします。
三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)は、アメリカ心臓超音波学会のガイドラインでは16mm未満は、右室の収縮障害を意味するとされ、
この、三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)と右室機能、有害事象の発現とに関する研究発表が相次いでおります。
現在、肺高血圧症に特化した治療薬は、レバチオ、アドシルカなどのPDE5阻害剤、
ボセンタン(トラクリア)、アンブリセンタン(ヴォリブリス)などのエンドセリン受容体拮抗薬、
エポプロステノール(フローラン)などのプロスタサクリン誘導体が挙げられます。
以前は、カルシウム拮抗薬や強心剤であるジギタリス製剤などが使用されていた事もございましたが、
これら薬剤の登場により、予後が改善しています。
アドシルカ、レバチオは、先にも述べたように、ED治療薬である、シアリスとバイアグラと同成分の薬剤です。 PDE5は、肺血管に多いとされており、これを阻害する事によって、血管拡張を生じ、肺血圧を低下させます。
エンドセリン受容体拮抗薬は、ボセンタンとアンブリセンタンがございます。
ボセンタンはエンドセリン受容体のサブタイプ、ETA受容体とETB受容体を共に阻害します。
これに対してアンブリセンタンは、ETA受容体を選択的に阻害いたします。
両者を比較検討した報告はございませんが、臨床的には同程度の効果と考えられています。
ボセンタンは、CYP系で代謝される薬剤との相互作用が懸念され、肝能障害が副作用として挙げられるのに対し、
アンブリセンタンは、代謝経路が異なるため、他剤との併用がしやすいとされます。
副作用は、末梢浮腫が多いとされます。
プロスタサイクリン製剤であるエポプロステノールは、注射剤です。
半減期が3~5分程度と非常に短いため、持続注射が必要です。
その為、留置カテーテルを要します。
カテーテル感染症、カテーテル抜去、輸液ポンプトラブルに注意が必要です。
プロスタサイクリン製剤は、欧米では、吸入薬であるアイロプロスト、
静注以外にも皮下可能であるトレプロスチニルが認可されています。
本邦で開発されたベラプロストは、経口のプロスタグランディン製剤で、短期的な場合には有効とする報告がございます。
薬剤の選択に先立ち、急性血管反応試験を実施いたします。
これは右心カテーテル試験施行時に行われる検査で、エポプロスタノールなどの薬剤により、
平均肺血圧が10mmHg以上低下し、40mmHg以下になる時、陽性と捉えられます。
急性血管反応試験が陽性の場合、カルシウム拮抗薬の反応が期待できるため、治療アルゴリズム上は、
カルシウム拮抗薬が、第一選択薬とされています。
しかし、長期的には、カルシウム拮抗薬単独での管理は困難な事がほとんどです。
急性血管反応試験が陰性の場合は、特化した治療薬を使用します。
WHO機能分類classⅠ~Ⅱの軽症例では、レバチオ、アドシルカなどのPDE5阻害剤、ボセンタン(トラクリア)、アンブリセンタン(ヴォリブリス)などの
エンドセリン受容体拮抗薬など、内服薬から治療を開始いたしますが、WHOclassⅢ~Ⅳの重症例では、
エポプロスタノール(フローラン)の持続注射を考慮するとされます。
これらを多剤併用してコントロールがつかない場合は、心房中隔開口術や肺移植が考慮されます。
written by シアリスを東京で.池袋スカイクリニック